メンタルヘルスケア (2/3)
2009年10月21日 [人事プロデューサークラブ運営事務局]
第2回 企業におけるメンタルヘルスケアの基本
■ メンタルヘルスケアの全体像を知る
企業におけるメンタルヘルスケアの要素は、大きく分けて4つある。1つ目は、従業員への意識づけ(一時予防)、2つ目は困った時の相談窓口、3つ目は職場の環境改善、4つ目は人事・労務部門でのルール整備である。この4つ全てを行う、というのが肝要なのだが、たいていの企業ではどれか1つ、もしくは2つ程度しか出来ていない。
■ 従業員への意識づけ
ここでいう従業員とは、その企業で働く人すべてという意味なので、役員から新入社員までの全員を指す。教育研修によって心の健康に関する知識を蓄え、セルフケア(自分で自分の心の健康をケアする)・ラインケア(管理職が自分の部署の心の健康をケアする)のスキルを身に付けてもらう。例えば管理職だけ、新入社員だけ、等と言うのは全く意味をなさない。なぜならば、心の不調は、いつだれに起こるかわからず、それは自分かもしれないし、同僚かもしれない。気づいた時点ですぐに行動を起こさねば手遅れになるため、全員が知識を持っている必要がある。また、教育研修以外にも、ポスターの掲示や、社内報でのコラムなど、事あるごとに少しずつ意識づけをおこなうのが良い。ごく一部の階層に、たった一度研修を行ったきり、何年もほったらかし、というのは、何もしないのと同じである。 尚、健康教育の義務は労働安全衛生法第69条に明記されている。
■ 相談窓口の確保
労働安全衛生法第69条には、もう一つの企業の義務が記されている。それは相談窓口の設置である。相談窓口は、必ずしも外部に設ける必要はないが、どうしても社内の人には話しづらい、仕事とは全く無関係な悩みである、ということになれば、人事部門の設けた社内窓口では機能しない。外部相談窓口として最近着目されてきたのが、コールセンター方式のEAPサービスである。24時間電話で専門家があらゆる相談に乗ってくれる。費用対効果を考えて導入を検討するのもいいだろう。社内相談所として機能してほしいのが産業医である。産業医の仕事は労働安全衛生法で細かく決められているが、企業側も医師側もそれを熟知していない場合が少なくない。契約内容の見直しも含め、今一度確認する必要があろう。社外・社内いずれの窓口も、従業員全員に対して、その存在を知らしめ、どのような時に相談すべきかを理解しておいてもらわなければ、窓口は開店休業状態となる。
■ 職場の環境改善
衛生委員会で話し合われるべき話題で多いのが、職場の環境に関してである。物的環境としては、作業場の換気、気温、湿度などの状態、また机・イスなど設備・什器類の状態。喫煙ルームや、非喫煙者のための休憩場所なども職場環境の大切な要素であろう。同じく大切な問題として、部署間のコミュニケーションや、業務の付加、過重労働問題などがあるが、これに関しては一朝一夕には改善できないため、まずは各部門ごとに、問題の洗い出しを行うのが良いと思われる。労働法第5条に明記されている『安全配慮義務』をクリアするためには、従業員が働きにくいと思っている事柄が、遅滞なく使用者側に提言される環境が必要である。
■ 人事労務部門におけるルール整備
メンタルヘルスケアに関する規定と言えば、休職・復職・退職に関わるものがほとんどであるが、多くのトラブルはこの規定が未整備であるために起こることが多い。たとえば、明らかにメンタル不調で、通常の業務ができない社員に対して休職命令が出せない規程になっていたり、同種の病気で再休職するとき、日数がリセットされてしまったり、という具合である。また人事にとっても現場にとっても悩みの多い復職であるが、これを主治医の診断書と本人の意思だけで可能とさせている規程が見受けられる。この場合は必ず産業医、もしくは精神科や心療内科のドクターからセカンド・オピニニオンを取ることを規程に明記しておくべきである。また、各種規程は、普段から従業員に親しんでもらうのも人事部門の仕事ではなかろうか。何もなければ、なかなか改めて読むことがないのが就業規則である。しかし、たとえばメンタル疾患で休職することになって初めてルールを知った、等という場合、本人にとって重圧が大きい場合がある。病気であれば尚更である。無用なトラブルを防ぐため、普段から、機会を見つけて従業員に規程を理解してもらうよう努力すべきである。
次回は、実際職場で起こるメンタル問題と、それに対処する方法などを書いてみたいと思う。
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(文) 株式会社プラネット・コンサルティング 代表取締役 根岸勢津子
<略歴>
高校卒業後、秘書養成の専門学校で英会話とタイピングを学ぶ。外資系海運会社営業部長秘書、IT企業社長秘書を経て営業職に転じ、法人向けパソコン研修の企画販売、コンサルティング営業に従事。その後、大手損害保険代理店に転職。
企業リスクマネジメントを学ぶ中で、産業界にヒューマンエラーによる不祥事や事故が急増してきたのを受け、EAPサービスの販売を手掛ける。その後、企業向けメンタルヘルスケア全般のコンサルティングを主力に法人化。人事向け定期購読誌等への寄稿、各種団体での講演など多数。
■ 事務局のつぶやき
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