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メンタルヘルスケア (3/3)

2009年11月16日 [人事プロデューサークラブ運営事務局]


■ある日、突然メンタル疾患の診断書を持って・・・

うつ病、うつ状態、適応障害、自律神経失調症・・・最近人事部門に持ち込まれる診断書で多い病名である。病院やクリニックの医師は5,000円支払えば診断書を書いてくれる、しかもある程度患者の希望を入れて。と同時に、最近ではメンタル疾患の診断書を書いたばかりに、患者から訴えられる医師もいる。医師も大変な商売である。
休みたいと言ってくる社員の診断書を鵜呑みにしていいのか? 最近寄せられる相談でもトップ3に入っている。ということは、見かけはだれが見ても健康そうなひとも、メンタル疾患の診断書を持ってくれば休ませてくれる、という常識が広まって、それを悪用する社員も出てきたということか? しかしながら、企業リスクマネジメントの立場から申し上げれば、主治医が休職の必要ありという診断をしているのに休ませず、その間万が一のことが起これば、企業側の立場が悪くなることは明白である。したがって、休職のフェイズでは、主治医の診断書を素直に信じた方が無難である、という見方がここ最近では強まっている。

■復職時の注意事項

『もう治ったので、明日から出勤します。ここに医師の診断書もあるし。』という申し出を、そのまま、そうですか、と受け取っていいのか? これはNOである。主治医はあくまでも患者と一対一で付き合っている医師であり、患者の勤務先を見たことも聞いたこともない人である。患者が、勤務先で与えられた仕事をどの程度こなせるのか? その際の注意事項は? といった見地からは判断を下すのが難しい。加えて、やはり医師も人の子であるから、『先生、休職中は無給なんです。なんとか、治ったという診断書を書いてください!』と懇願されて書いてしまう人も少なくないであろう。
そこで、頼りになるのが産業医である。産業医は、町医者とは立場が違う。町医者の顧客は患者だが、産業医の顧客は企業である。(人事部目線を持たない産業医とは付き合うべからず)産業医は、主治医の診断書を参考にしながら、本人の診察をし、本人の所属する部署のマネージャー、そして人事部門などと協議をする。(復職判定委員会)つまり、その企業の、その部門で、その仕事ができるかどうか。これを軸に、なるべく正確な医的判断をする人、という位置づけである。町医者との違いを分かって頂けるだろうか。当然、毎月職場を巡視し、衛生委員会に出席の上、健康教育をしてくれるドクターでなければ、上記のような正しい復職判断は難しい。漫然と過重労働者の面談をしているだけが産業医ではないのだ。

■リハビリ出社について

これには色々な議論がある。休職中、本人の自由意思でリハビリするのだから労災対象にならない、とか、仕事に関わる出社なのだから無給ではまずいのではないか?等々。しかし、大切なのは、会社はリハビリ施設でも医療施設でもない、という認識である。リワーク(休職から徐々に体や心を馴らして会社に復帰するまでの試みのこと)は、本来プロのカウンセラーや医療従事者、その中でもメンタル疾患のリハビリテーション専門の訓練を受けた人たちが行ってこそ効果が出る。(それでも成功率が高いとはいえない。)民間や公立のリワーク施設を利用することを勧めるが、大変な混雑で、長い順番待ちという地域もある。その場合は、せめてリハビリプログラムは、主治医・産業医共同で作成してもらい、人事部門が進行管理を行う。その際、忘れてはならないのが、当該部署のマネージャーのケアである。自分の部下が復職してくるときの、マネージャーの重圧は計り知れない。マネージャーのケアも復職プログラムの一環と考えて臨むべきでああろう。

■予防とルール整備が、メンタルヘルスケアの最重要課題

突き詰めて言えば、人事部門ができることは予防だけである。その予防を厚労省は4つのケアと呼んでいる。従業員一人一人が自分で心がけるもの(セルフケア)、上司が日々のマネジメントの中で心がけるもの(ラインケア)、産業医などの協力を得て行うもの(事業場内スタッフによるケア)、民間業者の協力を得て行うもの(事業場外資源によるケア)である。
正しい知識の普及と、早期相談できる窓口の設置、これはメンタルヘルスケアのインフラであるから、企業規模の大小にかかわらず行うべきである。
同じく重要なのが、就業規則の整備である。企業というところは、ルールに基づいて動くところである。特に就業規則は企業の法律といっても良い。メンタルヘルスに関わる問題の多くは、就業規則が整備されていることにより解決できるものが多い。逆にいえば、就業規則の未整備が、問題を大きくしていることがある。人事部門は、組織ぐるみでの予防体制を作るとともに、バックオフィス機能を最大限に活用し、メンタルヘルス対策を重視した就業規則の見直しを行ってほしい。

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お問い合わせ・ご意見は人事プロデューサークラブ事務局まで

(文) 株式会社プラネット・コンサルティング 代表取締役 根岸勢津子

<略歴>

高校卒業後、秘書養成の専門学校で英会話とタイピングを学ぶ。外資系海運会社営業部長秘書、IT企業社長秘書を経て営業職に転じ、法人向けパソコン研修の企画販売、コンサルティング営業に従事。その後、大手損害保険代理店に転職。

企業リスクマネジメントを学ぶ中で、産業界にヒューマンエラーによる不祥事や事故が急増してきたのを受け、EAPサービスの販売を手掛ける。その 後、企業向けメンタルヘルスケア全般のコンサルティングを主力に法人化。人事向け定期購読誌等への寄稿、各種団体での講演など多数。

メンタルヘルスケア (2/3)

2009年10月21日 [人事プロデューサークラブ運営事務局]


第2回 企業におけるメンタルヘルスケアの基本

■ メンタルヘルスケアの全体像を知る

企業におけるメンタルヘルスケアの要素は、大きく分けて4つある。1つ目は、従業員への意識づけ(一時予防)、2つ目は困った時の相談窓口、3つ目は職場の環境改善、4つ目は人事・労務部門でのルール整備である。この4つ全てを行う、というのが肝要なのだが、たいていの企業ではどれか1つ、もしくは2つ程度しか出来ていない。

■ 従業員への意識づけ

ここでいう従業員とは、その企業で働く人すべてという意味なので、役員から新入社員までの全員を指す。教育研修によって心の健康に関する知識を蓄え、セルフケア(自分で自分の心の健康をケアする)・ラインケア(管理職が自分の部署の心の健康をケアする)のスキルを身に付けてもらう。例えば管理職だけ、新入社員だけ、等と言うのは全く意味をなさない。なぜならば、心の不調は、いつだれに起こるかわからず、それは自分かもしれないし、同僚かもしれない。気づいた時点ですぐに行動を起こさねば手遅れになるため、全員が知識を持っている必要がある。また、教育研修以外にも、ポスターの掲示や、社内報でのコラムなど、事あるごとに少しずつ意識づけをおこなうのが良い。ごく一部の階層に、たった一度研修を行ったきり、何年もほったらかし、というのは、何もしないのと同じである。 尚、健康教育の義務は労働安全衛生法第69条に明記されている。

■ 相談窓口の確保

労働安全衛生法第69条には、もう一つの企業の義務が記されている。それは相談窓口の設置である。相談窓口は、必ずしも外部に設ける必要はないが、どうしても社内の人には話しづらい、仕事とは全く無関係な悩みである、ということになれば、人事部門の設けた社内窓口では機能しない。外部相談窓口として最近着目されてきたのが、コールセンター方式のEAPサービスである。24時間電話で専門家があらゆる相談に乗ってくれる。費用対効果を考えて導入を検討するのもいいだろう。社内相談所として機能してほしいのが産業医である。産業医の仕事は労働安全衛生法で細かく決められているが、企業側も医師側もそれを熟知していない場合が少なくない。契約内容の見直しも含め、今一度確認する必要があろう。社外・社内いずれの窓口も、従業員全員に対して、その存在を知らしめ、どのような時に相談すべきかを理解しておいてもらわなければ、窓口は開店休業状態となる。

■ 職場の環境改善

衛生委員会で話し合われるべき話題で多いのが、職場の環境に関してである。物的環境としては、作業場の換気、気温、湿度などの状態、また机・イスなど設備・什器類の状態。喫煙ルームや、非喫煙者のための休憩場所なども職場環境の大切な要素であろう。同じく大切な問題として、部署間のコミュニケーションや、業務の付加、過重労働問題などがあるが、これに関しては一朝一夕には改善できないため、まずは各部門ごとに、問題の洗い出しを行うのが良いと思われる。労働法第5条に明記されている『安全配慮義務』をクリアするためには、従業員が働きにくいと思っている事柄が、遅滞なく使用者側に提言される環境が必要である。

■ 人事労務部門におけるルール整備

メンタルヘルスケアに関する規定と言えば、休職・復職・退職に関わるものがほとんどであるが、多くのトラブルはこの規定が未整備であるために起こることが多い。たとえば、明らかにメンタル不調で、通常の業務ができない社員に対して休職命令が出せない規程になっていたり、同種の病気で再休職するとき、日数がリセットされてしまったり、という具合である。また人事にとっても現場にとっても悩みの多い復職であるが、これを主治医の診断書と本人の意思だけで可能とさせている規程が見受けられる。この場合は必ず産業医、もしくは精神科や心療内科のドクターからセカンド・オピニニオンを取ることを規程に明記しておくべきである。また、各種規程は、普段から従業員に親しんでもらうのも人事部門の仕事ではなかろうか。何もなければ、なかなか改めて読むことがないのが就業規則である。しかし、たとえばメンタル疾患で休職することになって初めてルールを知った、等という場合、本人にとって重圧が大きい場合がある。病気であれば尚更である。無用なトラブルを防ぐため、普段から、機会を見つけて従業員に規程を理解してもらうよう努力すべきである。

次回は、実際職場で起こるメンタル問題と、それに対処する方法などを書いてみたいと思う。

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(文) 株式会社プラネット・コンサルティング 代表取締役 根岸勢津子

<略歴>

高校卒業後、秘書養成の専門学校で英会話とタイピングを学ぶ。外資系海運会社営業部長秘書、IT企業社長秘書を経て営業職に転じ、法人向けパソコン研修の企画販売、コンサルティング営業に従事。その後、大手損害保険代理店に転職。

企業リスクマネジメントを学ぶ中で、産業界にヒューマンエラーによる不祥事や事故が急増してきたのを受け、EAPサービスの販売を手掛ける。その後、企業向けメンタルヘルスケア全般のコンサルティングを主力に法人化。人事向け定期購読誌等への寄稿、各種団体での講演など多数。

メンタルヘルスケア (1/3)

2009年9月17日 [人事プロデューサークラブ運営事務局]


メディアには『10年間連続で自殺者3万人超!』の見出しが躍り、うつ訴訟で従業員勝訴、メンタル不全の労災認定急増などの報道等を目にしない日はないくらいである。職場におけるメンタルヘルスケアの大切さは各方面から叫ばれている通り国を挙げての急務と思われる。この連載では、企業・団体の人事部門として従業員の心の健康をどう増進させていくか、また、『福利厚生』としてではなく『企業リスクマネジメント』の視点でメンタルヘルスケアを捉えた施策を様々な具体例を交えてお届けしたいと思う。

第1回 日本の企業が直面する現状

■ 人事部門を苦しめるうつ問題

現在、目に見えるメンタル不全の従業員は平均的に総従業員数の1%と言われている。目に見える、とは休職、退職はもちろんのこと、目に見えて勤怠が乱れている人などを含める。つまり『様子がおかしいな。』と周りが気付く程度の人も含んだ数字である。たとえば従業員が1000名いれば約10名の人が何らかの症状を発症し、普通に勤務できない状態ということになる。メンタルヘルスケアという業務に不慣れな人事部門・労務部門が多いため、主治医や産業医、また本人とのやりとりで手間取る。1日で終わらないことも多く、発症者が地方にいれば、出向いて面談ということもあり得る。社内での精神疾患に対する偏見もまだまだ強く、自分の部署から病人が出れば即刻異動させたい、などの申し出があり、その対応に人事部は苦慮する。かといって抜本的な予防体制の構築を、というと予算が取れない、役員の理解が無い、などの声が多く聞かれる。

■ 日本における自殺者の現状

さて、日本での年間自殺者の数をご存じだろうか。約3万人超えが11年間続いている。これは1日に80人以上の人が、どこかで自分の命を絶っているということである。1時間に3.5人以上である。しかし、これに驚いてはいけない。この数字は、発見されて24時間以内に命を絶った人の数であって、未遂はカウントされていないのである。これも入れるとおよそ10倍に膨らむのではないかと国は懸念している。内訳は、無職者が約15000名、サラリーマンが約8000名、自営業者約3700名、主婦約2700名と続いているが、ここで着目したいのは無職者という言葉である。なにもホームレスが自殺しているという意味ではない。もともと働いていたが、何らかの理由で働けなくなり、そのまま自殺した人々が沢山含まれている。何らかの理由の中には、当然メンタル疾患が考えられる。

■ 精神疾患による労災申請の激増と企業リスク

ここ数年、精神疾患による労災の申請が激増している。(平成10年に42件だったものが、平成19年には952件)それに対する認定数もここ5,6年で倍になっている。(平成19年で268件) まず、従業員の希望に従って労災の申請をすると、業務との因果関係を調べに労基署の調査が入る。本人の過去6ヶ月分の労働時間の記録、労働内容についてはもちろんのこと、それに加えて産業医の選任状況、衛生委員会の設置と議事録の確認、健康診断の事後措置、長時間残業者への医師面談記録など様々なものを提出させられる可能性が高い。企業のリスクはここにもある。つまり、一人の労災申請をきっかけに痛くもない腹を探られることがある。
さて、労災が認められるかどうかは個人と国の争いになるが、従業員が会社を相手取って損害賠償請求をしてくるケースが増えている。これは従業員と企業の間の争いとなる。訴訟ともなれば、総務部・人事部のパワーはかなりそちらに割かれることとなり、インターネット掲示板に訴訟の様子でも書かれれば(最近そういった例が多い)自社の従業員は当然のこと、取引先にも知られることとなり、ブランドの失墜は免れない。長年かけて築き上げた信頼が一夜にして奪われることもある。結果として賠償金を支払うこととなれば、大切な利益の中から支払うこととなり損失を出す。この一連のリスクを認識したうえで、企業は包括的なメンタルヘルスケア体制の構築を考えるべきであろう。

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(文) 株式会社プラネット・コンサルティング 代表取締役 根岸勢津子

<略歴>

高校卒業後、秘書養成の専門学校で英会話とタイピングを学ぶ。外資系海運会社営業部長秘書、IT企業社長秘書を経て営業職に転じ、法人向けパソコン研修の企画販売、コンサルティング営業に従事。その後、大手損害保険代理店に転職。

企 業リスクマネジメントを学ぶ中で、産業界にヒューマンエラーによる不祥事や事故が急増してきたのを受け、EAPサービスの販売を手掛ける。その後、企業向 けメンタルヘルスケア全般のコンサルティングを主力に法人化。人事向け定期購読誌等への寄稿、各種団体での講演など多数。

■ 事務局のつぶやき